2007年度日本コミュニケーション学会
関東支部定例研究会開催報告




CAJ関東支部2007年度定例研究会が、322日に東海大学代々木校舎で行われました。

 今年度は2つの特別セッションが設けられ、第一部は、神奈川大学人間科学部准教授の松本安生氏をお迎えし、「温暖化とコミュニケーション」についてご講演いただきました。

 続く第二部では、日本における演説・討論について歴史的研究をなさっている町田市自由民権資料館学芸員の松崎稔氏から、「明治1020年代の討論 活動」について発表していただき、次に、創価大学大学院博士課程在籍中の久保健治氏から、「大正・昭和期の弁論部の活動」についてお話していただきました。




特別セッション1

 松本氏は、「『知・情・意』に着目した実感を伴う環境コミュニケーションのための実験的研究」という題目で、環境省地球環境研究総合推進費(S-52007年度成果報告の一部を発表されました。本発表では、環境に興味のない人々にどのように環境問題を伝えていくのか、どのように態度変容を起こすことができるのか、に研究の焦点が当てられ、マスメディア(ビデオ映像等)、ロールプレイング(演劇ワークショップ等)、参加・体験型施設、以上3つを「知・情・意」の側面から効果的に組み合わせた統合的な手法が提案されていました。

 発表後、松本氏からお話しいただいた「温暖化理解のための『実感』を伴うために有効なコミュニケーション」という概念について、会場からは活発な議論がなされました。「実感」とは何かという根源的な問いから、我々がよく耳にする「環境」という言葉は一体何を指しているのか、温暖化を正しく理解させることが重要なのか、または、行動を伴う態度変容を促すことが重要なのか等、深刻化する環境問題に関するコミュニケーションのあり方について参加者一同が議論し、理解を深める貴重な機会となりました。




晴天の中での研究会
(会場からの眺め)


司会の師岡先生と
発表者の松本先生


講演される松本先生




特別セッション2

 まず、自由民権資料館学芸員の松崎氏が「明治1020年代の討論活動について−地域の事例を手がかりに−」というタイトルで発表され、自由民権運動と明治期の言論活動イメージ、民権期結社の演説討論、明治20年代青年結社の演説討論等を中心に話されました。

 松崎氏の歴史的文書の研究からは、当時の地域リーダーが、幕末以来動揺を続けている地域社会の秩序安定を重視しつつ、自由民権運動に参加していった経緯や、秩序形成のために個の「智識」「自治自衛」の精神修養が求められた時期での活動手段が「演説討論」であったことが明らかにされ、参加者一同、大きな関心を持ちました。また、氏の発表の中では、国会開設運動が活発化する中で、運動は不特定多数へ向けたアピールが必要となり、「討論会」から「演説会」へと変遷していった様子も伺え、大変興味深い発表でありました。


 次に、創価大学大学院博士課程の久保氏から「大正・昭和期における弁論部の活動について−中央大学辞達学会を中心に−」という題目で、演説・討論という当時の日本において新規のものが、どのように日本に定着し、変遷を辿ってきたのか、という研究発表がされました。主な内容は、大正、昭和の大学弁論大会と中央大学辞達学会の活動が中心に扱われ、大学においても先に討論会(法廷の討論会)が行われるようになり、後に演説会へと移り変わっていく様子が話されました。

また、大学の弁論部が学内の活動から他大との合同討論会、そして、地方において公開討論会を開くまで活動の幅を広げていき、当時大勢の観客を集めていた歴史的経緯や、昭和初期の各大学の弁論部が、マルクス主義理論の研究に走り急激に左傾化し、反社会主義的な弁論が展開されていった様子も発表の中で明らかにされていました。





講演される松崎先生


活発な質疑応答


講演される久保先生


 本年度の定例研究会は、コミュニケーション、演説・討論等のCAJにとって馴染み深い研究領域を、環境科学と歴史学の観点から発表者の方々にお話しいただき、領域横断的な貴重な学術交流の場となりました。




 CAJ関東支部では、2008年度も引き続き研究会等を開催していく予定です。CAJ関東支部の催し物では、毎回多くの参加者よって活発な議論のもと、コミュニケーションに関わる幅広い研究、学術活動を行っております。次回の研究会等の開催の期日は未定でありますが、決まり次第ご報告させていただきます。今後ともよろしくお願い申し上げます。




報告者 関東支部運営委員
石橋嘉一(総合研究大学院大学)